【要旨】 小脳は運動制御・運動学習において重要な役割を担っており、近年では 高次脳機能に関与していることも示唆されている。小脳は最も良く研究 されている脳部位であり、分子から行動レベルまで膨大な量の実験デー タが存在する。それらに忠実に小脳の神経回路をコンピュータ上に実装 し、数値シミュレーションをおこなうことで、小脳と同じ機能をもった 人工小脳を開発することが可能になり、様々な工学上の応用が期待でき る。 これまで我々はGraphics Processing Unit (GPU)やField Programmable Gate Array (FPGA)と言ったハードウェア上に、比較的小規模の人工小脳 を実装してきたが、今回スーパーコンピュータShoubuを用いて、ネコ一匹 分に相当する10億ニューロンからなる人工小脳を開発した。さらに、 Shoubuの持つ計算パワーを活かして、工学応用に必須となる、実時間で の数値シミュレーションに成功した。 本講演では、まず小脳の機能と構造について簡単に解説し、その後Shoubu における人工小脳の実装上の様々なトピックについて紹介する。 【略歴】 1996年3月 電気通信大学 電気通信学部 情報工学科卒業 1998年3月 東京工業大学 大学院 情報理工学研究科 計算工学専攻 修士課程 修了 2002年3月 東京工業大学 大学院 情報理工学研究科 情報・数理工学専攻 博士課程 修了 博士 (理学) 取得 2002年4月--2012年3月 理化学研究所 脳科学総合研究センター 研究員 2012年4月--現在 現職