【要旨】 「2015年2月から開発を開始し、わずか4か月間で設置・稼働まで漕ぎ着けた第 2世代の液浸冷却スパコンZettaScaler-1.4。その最大規模のシステムとして理 化学研究所の情報基盤センターに設置させて頂いた「Shoubu(菖蒲)」は、 2015年6月期と11月期に2期連続で消費電力効率世界ランキングの「Green500」 で世界1位に認定されている。液浸槽の大きさの制約からZettaScaler-1.5への 更新は見送られたが、2016年6月期は新開発のパッケージを採用したPEZY-SCnp に全面換装したZettaScaler-1.6に刷新して、現在の消費電力効率の世界記録で ある「7.03GFLOPS/W」の更新に挑むこととなる。それ以降も、新しい給電方法 による更なる消費電力効率の改善や、二重合・三重合液浸冷却の導入による PUE値の改善も計画しており、世界最高効率のスーパーコンピュータとして、ま だまだ進化し続ける予定である。2017年には待望のPEZY-SC2が利用可能となる ことから、2017年中にもZettaScaler-2.0システムベースの新「Shoubu(菖 蒲)」に刷新できる可能性があり、2018年に稼働が開始される米国の次世代ス パコン「Summit」、「Aurora」などと消費電力効率を競うことが予想される。 2016年6月期のTOP500/Green500に向けた取り組みと、その後の将来構想につい て、締め切り直前のGreen500申請用計測の最新の進捗状況を交えて解説する。 【講師略歴】 1992年新潟大学医学卒業、1994年東京大学医学系大学院に進学と同時に医療系 研究開発法人を設立して医療診断装置・システムの開発を開始。1997年に米国 シリコンバレーに医療系画像診断システム法人を設立し、2003年には米国 Computer World Honorsを医療部門で受賞。2010年、日本にメニーコアプロセッ サ開発の株式会社PEZY Computingを、2013年にUltraMemory株式会社を、2014年 には株式会社ExaScalerを設立し、独自技術によるスーパーコンピュータ開発に 着手。2015年7月にはGreen500ランキングで、消費電力性能世界1-3位を独占す るスパコンを開発して理化学研究所と高エネルギー加速器研究機構に設置。