RIKEN BMT コンテスト

RIKEN BMT コンテスト開催のお知らせ

2006年2月16日

理化学研究所 情報基盤センター

理化学研究所・情報基盤センターでは計算機の性能評価を行う RIKEN BMT コンテストを開催します.

RIKEN BMT コンテストで使用するベンチマークは,計算機の性能評価に用いられることが多い,非圧縮性流体の Poisson 方程式ソルバーを用いたものです.具体的には以下の2種類を使用します.

  1. 構造格子を用いた Poisson FDM-BMT
  2. 非構造格子を用いた Poisson FEM-BMT

このコンテストでは,計算機の種類・規模は問わない「無差別部門」,そして,使用する計算機を1台だけを使った結果に限定し,Poisson FDM-BMT のみを対象とする「1PC 部門」の 2 部門を用意しました.

それぞれの部門に応募して頂いた中で,最も良い成績を修めた方を 3月23日に開催いたします「理研シンポジウム」において”RIKEN BMT Award”として表彰します.奮って応募してください.応募の方法などの詳細はこちらをご覧ください.また,疑問・お問い合せ等は bmt@riken.jp までご連絡ください.

コンテストの目的

コンテストの目的は 2 点です.1点目は BMT を最も高速に処理できた計算機の結果を得ることができるか.2 点目は Poisson FDM-BMT の実行において,1台のPCを使って個人の努力(何でもOK)においてどれほど高速化できるかという点です.

応募資格

ベンチマークを行う意思のある方ならどなたでも

受賞対象

受賞者はサイトではなく,ベンチマーク値を計測した個人またはグループとします.ただし,サイトに導入されたマシンの場合,所有サイトに了解を得られていることとします.

応募期間

応募の締め切りは2006年3月18日とします.

応募方法

応募要領の「測定に関する注意点」を確認後,プログラムを実行してください.その後,応募要領に示す「応募に必要な情報」を e-mail で次のアドレスにお送りください.

送り先

bmt@riken.jp

件名(Subject): RIKEN BMT Award

ベンチマークテスト結果の公開について

応募されたベンチマークテスト結果につきましては一般公開させていただきます.結果の公開にあたって、ベンチマークテスト実施者のお名前、所属等そして用いた計算機の諸元等は掲載させて頂きます.

送られた個人情報等の内容を調査以外の目的で使用するなどして、テスト結果をご提供いただいた方にご迷惑をおかけすることは、一切ございません.但しベンチマーク結果に対して我々から問い合わせをする場合もあります.また公開するベンチマークテストの結果に関する責任はベンチマークテストの実施者にあるものとします.当方では責任を負いませんので、その責任において応募・実施してして頂くようお願い致します.

応募要領

無差別部門

Poisson FDM-BMT と Poisson FEM-BMT を高速に解けたマシンが表彰対象です.計算機アーキテクチャは何でもありとします.大規模PCクラスタはこちらの部門とします.本部門では2つのベンチマークプログラムを用いますが,スコアはFDM,FEM 毎に応募があった最大性能を1.0として,その他を最大との割合に変換し,その値を足し合わせたものとします.ですので,最高スコアは2.0となります.

【使用するベンチマーク】
2 つのベンチマークを実行します.(ベンチマークの詳細は下記)

【測定に関する注意点】
MPI による並列版を用いる場合の分割パターンは自由とします.また,プログラムコードの改変は不可とします

【測定方法】
README をご覧ください

【応募に必要な情報】
結果 2つのベンチマーク実行後に出力される情報一覧(編集しないこと)
エントリー名 御名前あるいはグループ名(代表者),所属(任意)
ハードウェア情報
  • システム名称(マシンの愛称等)
  • CPU の種類(CPU 名称,駆動周波数,使用 CPU 数)
  • 総搭載メモリ量(メモリの種類)
  • 通信機構名称あるいはネットワークトポロジーと通信帯域(MB/s)について
ソフトウェア情報
  • OS とバージョン
  • コンパイラとバージョン
  • コンパイルオプション

1PC 部門

Poisson FDM-BMTのチューニングによる高速化を対象とします.ハードウェアは一般的な計算機1台(想定は Pentium系,Itanium,Opteron,PowerPCを搭載した計算機)を用いるものとします.1PCとは2CPUパッケージまで搭載されたPCとします(2月20日付記).FORTRAN77,C言語あるいは一般に公開されている言語に準拠するプログラムとします.また,GPU 等の利用を制限することはありません.チューニングにより演算量が変わる場合も想定されますので、本部門のスコアは非改造と改造後の実測時間における速度向上率とします.最適化オプションは非改造のものと改造のものは同じであることとします.

【使用するベンチマーク】
1 つのベンチマークを実行します.(ベンチマークの詳細は下記)

【測定に関する注意点】
FORTRAN77あるいはC言語に準拠するプログラムの改造は可能です.ただし,チューニングは元プログラムと比べて,計算に利用する問題サイズ・データ量が同じであり,有意に同じ結果が得られること.また,最適化系のコンパイルオプションは非改造のものと改造のものは同じであること.

  1. 改変後のプログラムはご自分で作成されたものであること
  2. 二次著作物の著作者財産権は放棄頂けること.
  3. チューニングは元プログラムと比べて,演算に用いる配列データが同じであり,配列pに改変前と同じ結果(配列pの総和の誤差で比較)が得られること.
  4. ハードウェアの改造は自由に行ってよい.
  5. 基準となる非改造プログラム・非改造ハードウェアでの実行で得られた結果と改造したもののコンパイルオプションは同じであること.
  6. ハードウェアをダウンクロックしたものを基準にするのはやめて下さい.

【測定方法】
README をご覧ください

【応募に必要な情報】
結果 元プログラムとチューニング後のプログラムのベンチマークをそれぞれ実行後,出力される情報一覧(編集しないこと)
ソースコードの説明
  • チューニングしたプログラムコードとともに
  • チューニング方法についての説明プログラムコードを改変した場合,プログラムコード
エントリー名 御名前あるいはグループ名(代表者),所属(任意)
ハードウェア情報
  • システム名称(マシンの愛称等)
  • CPU の種類(CPU 名称,駆動周波数)
  • 総搭載メモリ量(メモリの種類)
ソフトウェア情報
  • OS とバージョン
  • コンパイラとバージョン
  • コンパイルオプション

ベンチマークの詳細

科学技術計算におけるベンチマークプログラムは Linpack や SPEC が世界的に認められています.また、Linpack プログラムの性能値から Top500 リストが決められています.ベンチマークテストに用いるプログラムは自分のプログラムにおいて行うのが最も効果的です.Linpack と同等のプログラムを使うユーザーにとって Linpack ベンチマークの結果は有益ですが、それ以外ではあまり重要な性能指標にはなりません.

ここでは,理研で使用している2つの性能評価基準ベンチマークを用います. いずれも計算流体力学(CFD, Computational Fluid Dynamics)コードのコア部分を抜き出したものです.一方は,構造格子系の解法である差分法(FDM, Finite Difference Method)にもとづいたもので,これまで HimenoBMT あるいは姫野ベンチと呼ばれていたものです.もう一方は,非構造格子系の解法である有限要素法(FEM, Finite Element Method)にもとづいたものです.いずれも,非圧縮性流体解析プログラムにおいて最も計算負荷が高い,圧力に関する Poisson方程式求解部分の処理速度を測定し,その結果を FLOPS 値で示します. Poisson 方程式は,流体解析だけではなく,熱解析や電磁場解析などにおける偏微分方程式の求解においても現れる方程式です.

Poisson FDM-BMT
構造格子系の解法である差分法にもとづいて空間離散化を行い,MAC(Maker And Cell)法系計算アルゴリズムに現れる Poisson 方程式を Jacobi 法を用いてい て求解します.このためプログラムが短く簡潔であるため、並列化やベクトル 化が容易であるうえ,チューニングも行いやすくなっています.以前、本 Poisson FDM-BMT(HimenoBMT)はスーパーコンピュータ(ベクトル計算機)でな ければ、性能が出ないと言われた時代がありました.それは,本ベンチマーク はデータアクセス量が多く、処理速度はメモリアクセス帯域に大きく依存する からです.しかし、近年の PC アーキテクチャのメモリアクセス帯域は非常に広 いものになりました.現在の PC アーキテクチャは少し前のスーパーコンピュー タを凌駕しつつあり、十分高性能な性能が引き出せます.

Poisson FEM-BMT
非構造格子系ベンチマークでは,有限要素法にもとづいて離散化された Poisson 方程式を共役勾配法(CG法)により求解する部分を用います.データ構造としては,連立一次方程式の係数行列の非ゼロ成分をそのインデックスと ともに記憶します.この場合,データアクセスは間接参照となり,そのアクセ ス先も連続的ではないという点が Poisson FDM-BMT のような構造格子系ベンチ マークの場合と大きく異なります.このため,構造格子をもちいたベンチマー クとは違った点から計算機の性能を評価することが可能です.このような演算 やデータアクセスは,計算流体力学以外の非構造格子を用いた構造解析などに おいてもよく見られるものです.